朝だ、海だ、いざ…
一晩中ゴソゴソして、朝五時には「外はもう明るい。泳ぎたいよ〜」と語る視線を、ちらりちらり、こちらへ送ってくるカブ君。はいはい…と用意して、外へ。朝一番のトイレを済ませたら、かつて知ったる道を尻尾フリフリ突き進んで、昨年と同じ小さな狭い浜へ。
去年は怖がった段差だったのに、今年は気持ちが勝って…飛び降りたは良いけれど、そこでずっこけ。やっぱり足腰は、寄る年波で弱ってきてるねぇ…。
カブ君は何ともない様子で、先ずは体を濡らしに入って、スイスイ〜。上がって浜に座ると「棒を投げてよ」とせがむ、いつもの流し目。流れ着いていた棒を投げれば、それを目標に泳ぐ。相変わらずの、見事なラブラドールらしい正統派、本家犬かき。
投げれば、泳いでとってくるを何度もなんども繰り返し。もう疲れたかな、と投げるのを止めたら、「もう一回です」みたいな態度。本当に泳ぎが好きなんだねぇ。
水泳は体重がかからない全身運動で、人間にとってもそぉなんだけど、老犬にも実は理想的。全国的に、そこらじゅうにドッグラン同様、犬が泳げる場所ができてゆくと良いのになぁ、と思うし、河川だって、ワンコ用に泳げるゾーンができたって良いだろう。ゴミを掃除してくれるワンコが続出すること、間違いなし、だ。
最後の仕上げは段差を上がるジャンプだけど、これが駄目。一年で、随分老いたねぇと思う。ラブラドールの老いは、後足から出て来るんだなぁ。それでも、「おなかすいた〜! ご飯、ゴハン」の食欲パワーで、いそいそと歩いてベイリリィへ戻る。玄関脇のシャワーで塩水を洗い落として拭き上げれば、室内犬モードに復帰。
朝食までの間、泳いだ満足感、けだるさに浸って寝そべるカブ君。だけど、「さぁ、ゴハンに行くよ〜」と声をかけると、シャキッと起き上がった。我々には和朝食。カブ君には昨夜同様、専用のワンプレートブレックファースト。私は、旅館の朝食らしくいつも通り、家内が呆れる朝から三杯。
海岸沿いに串本へ
部屋に戻り、ヒトイキついてのんびりしてから、考えていた日帰りドライブに出かけた。目指すは、串本町大島。
海岸沿いにひた走っていると、綺麗な見晴らしの駐車場。波と波が出会うから、夫婦波。クマの水軍はカブ君(熊の子)とは無関係…でも、財宝がこの近くの洞窟に眠っているとか、いないとか…。カブ君が嗅ぎ当てれば、凄いんだけどなぁ。
看板の夫婦波の夫・婦が逆なのは、これからは妻が強い時代だろうということで、なんだそぉな。
再び走り出して、次に休憩したのは道の駅「すさみ」。紀勢自動車道となったすさみ南ICから南紀田辺までの間ができあがって、無料区間として走れるようになっているその終端にあたり、なかなか力の入った施設。エビとカニの水族館というのもあるらしいけど、ワンコ連れは芝生の日陰で休憩だけ。
次に目指したのは、潮岬。あの、天気予報や台風情報で聞き慣れた地名の場所だ。スピードリミッターを使ったクルージングが、綺麗な海を楽しむ余裕を生んでくれる。海岸が近いところで後部座席の窓を開けてやると、珍しくカブ君が顔を突き出した。「海だよ〜。この香りだよ〜」とでも言うような嬉しそうな目をしているのが、ドアミラーに映る。やがて、灯台を望むパーキングエリアが見えたので、入って駐車。この頃にはまた雲が広がっていたけれど、いかにも台風などの情報で出てくる場所らしく、そりたった岩壁の上に灯台。行き交う船舶には、この灯火が大事な頼りだ。
塩岬の雰囲気をカメラに収めてから、最終目的地、エルトゥールル号殉難将士慰霊碑のある樫野崎を目指す。一瞬だけどうわぁ〜というような景色もあって、なかなか楽しいドライブコース。と、見えてきたのは、まるで海の中の堰堤。「え〜っ、あれの上を走るの…」と、あの大島に渡る橋には驚いたのなんの。
エルトゥールル号と日土
驚きの橋を渡ると、ほどなく樫野崎で、道なりのままほぼ自動的に駐車場へたどり着いた。
1890年9月16日の夜半、
灯台は世界的に、その船乗りたちの道標という生業から、人生の灯台といった比喩表現にもなり、詩情を醸し出す場所として観光の対象となっているが、樫野崎灯台もまた、感慨深い観光スポットだ。
1870(明治3)年7月8日初点灯という、日本最初の石造の灯台。日本の灯台の父、スコットランド人のリチャード・ヘンリー・ブラントンが設計したその姿が、険しい岬にあって優美なコントラストを醸し出している。併設されている官舎の壁には、そのさらされ続けている自然の荒々しさが刻まれる。脇の、広く太平洋を見渡す眺望が楽しめるらせん階段の展望台は、2002年完成。
灯台の周囲にユリが咲いていたが、これは建設当時のイギリス人らが植えたものだという。150年近い歳月を超え、灯台とともに岬の厳しい風雨にも耐えて、今なお咲き続けているのだ。
つれて行った飼い主は感動しきりなのだけど、カブ君にとっては、海の香りこそすれ、飛び込めるでなし、あまり楽しい処ではなかったかも知れない。まぁそれでも、テクテク歩くには歩いたけどね。駐車場に戻ると、脇で近隣の方だろうか、キンカンシャーベットを売っておられた。歩いて汗ばんだのでいただいたら、柑橘のナチュラルで素朴な味わいが、とても良かった。
旅が広がる新しい道路
帰路は、紀勢自動車道のすさみ南ICから南紀白浜まで、真新しい無料区間の道路を利用してみた。正直、これは「ワープ感覚」。往路のくねくねした海岸線とは打って変わって、山間のトンネルだらけの自動車道。時折、トンネルとトンネルの間から南側を望むと、海が見えたりする。これほどの道を良くも造ったもんだと思うほど、険しいところを貫いた道だった。
宿に帰着したのは、丁度良い頃合い…4時頃だっただろうか。ベイリリィを起点としたゆったりペースの日帰りドライブコースとして紀勢道を加えてみると、また新しい旅が楽しめそうだ。
樫野崎の思い出に浸りながら、温泉と夕食
一風呂浴びた後、二泊目の夕食もまた、豪華。カブ君にも、DogKitchen製のメニューをメインにした、ワンプレートディナー。
いつもの、食べきれないかと思うほどの量には本当に恐れ入るが、そればかりではなく、実は微妙にクオリティが上がっていた…ように思う。
アワビのワタにはクセがなく、新鮮そのもの。和牛しゃぶしゃぶも、肉が頃合いの美味しさで、堪能できた。
満腹する頃には夜のとばりも降り、カブのイビキととカエルの合唱が、更けゆく夜のBGMだ。
テレビをつけるでもなく、ゆったりまったり。缶ビールをちびちびナイトキャップに、のんびり休暇。かくて、二日目の夜も、いつの間にか眠りに落ちていた。
Posted by nankyokuguma at 09:47:24. Filed under: 犬連れ旅