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Friday, May 27, 2016

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朝だ、海だ、いざ…

一晩中ゴソゴソして、朝五時には「外はもう明るい。泳ぎたいよ〜」と語る視線を、ちらりちらり、こちらへ送ってくるカブ君。はいはい…と用意して、外へ。朝一番のトイレを済ませたら、かつて知ったる道を尻尾フリフリ突き進んで、昨年と同じ小さな狭い浜へ。

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去年は怖がった段差だったのに、今年は気持ちが勝って…飛び降りたは良いけれど、そこでずっこけ。やっぱり足腰は、寄る年波で弱ってきてるねぇ…。

カブ君は何ともない様子で、先ずは体を濡らしに入って、スイスイ〜。上がって浜に座ると「棒を投げてよ」とせがむ、いつもの流し目。流れ着いていた棒を投げれば、それを目標に泳ぐ。相変わらずの、見事なラブラドールらしい正統派、本家犬かき。

投げれば、泳いでとってくるを何度もなんども繰り返し。もう疲れたかな、と投げるのを止めたら、「もう一回です」みたいな態度。本当に泳ぎが好きなんだねぇ。

水泳は体重がかからない全身運動で、人間にとってもそぉなんだけど、老犬にも実は理想的。全国的に、そこらじゅうにドッグラン同様、犬が泳げる場所ができてゆくと良いのになぁ、と思うし、河川だって、ワンコ用に泳げるゾーンができたって良いだろう。ゴミを掃除してくれるワンコが続出すること、間違いなし、だ。

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最後の仕上げは段差を上がるジャンプだけど、これが駄目。一年で、随分老いたねぇと思う。ラブラドールの老いは、後足から出て来るんだなぁ。それでも、「おなかすいた〜! ご飯、ゴハン」の食欲パワーで、いそいそと歩いてベイリリィへ戻る。玄関脇のシャワーで塩水を洗い落として拭き上げれば、室内犬モードに復帰。

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朝食までの間、泳いだ満足感、けだるさに浸って寝そべるカブ君。だけど、「さぁ、ゴハンに行くよ〜」と声をかけると、シャキッと起き上がった。我々には和朝食。カブ君には昨夜同様、専用のワンプレートブレックファースト。私は、旅館の朝食らしくいつも通り、家内が呆れる朝から三杯。

写真 あさごはん

海岸沿いに串本へ

写真 恋人岬駐車場

部屋に戻り、ヒトイキついてのんびりしてから、考えていた日帰りドライブに出かけた。目指すは、串本町大島。

海岸沿いにひた走っていると、綺麗な見晴らしの駐車場。波と波が出会うから、夫婦波。クマの水軍はカブ君(熊の子)とは無関係…でも、財宝がこの近くの洞窟に眠っているとか、いないとか…。カブ君が嗅ぎ当てれば、凄いんだけどなぁ。

看板の夫婦波の夫・婦が逆なのは、これからは妻が強い時代だろうということで、なんだそぉな。

写真 婦夫波

再び走り出して、次に休憩したのは道の駅「すさみ」。紀勢自動車道となったすさみ南ICから南紀田辺までの間ができあがって、無料区間として走れるようになっているその終端にあたり、なかなか力の入った施設。エビとカニの水族館というのもあるらしいけど、ワンコ連れは芝生の日陰で休憩だけ。

次に目指したのは、潮岬。あの、天気予報や台風情報で聞き慣れた地名の場所だ。スピードリミッターを使ったクルージングが、綺麗な海を楽しむ余裕を生んでくれる。海岸が近いところで後部座席の窓を開けてやると、珍しくカブ君が顔を突き出した。「海だよ〜。この香りだよ〜」とでも言うような嬉しそうな目をしているのが、ドアミラーに映る。やがて、灯台を望むパーキングエリアが見えたので、入って駐車。この頃にはまた雲が広がっていたけれど、いかにも台風などの情報で出てくる場所らしく、そりたった岩壁の上に灯台。行き交う船舶には、この灯火が大事な頼りだ。

写真 道の駅と潮岬

塩岬の雰囲気をカメラに収めてから、最終目的地、エルトゥールル号殉難将士慰霊碑のある樫野崎を目指す。一瞬だけどうわぁ〜というような景色もあって、なかなか楽しいドライブコース。と、見えてきたのは、まるで海の中の堰堤。「え〜っ、あれの上を走るの…」と、あの大島に渡る橋には驚いたのなんの。

写真 大島へ海を渡る「橋」!?

エルトゥールル号と日土

樫野崎の断崖絶壁上に建つ慰霊碑

驚きの橋を渡ると、ほどなく樫野崎で、道なりのままほぼ自動的に駐車場へたどり着いた。

1890年9月16日の夜半、土耳古(トルコ)の軍艦が、ここの東の海で遭難した。詳細は割愛するが、殉難将士たちを慰霊した碑を見上げていると、その経緯の可哀想さを思い出して涙が出てきた。日土の縁は、この時の救援活動などで、その後もオスマン帝国と正式な国交が結ばれなかったにもかかわらず、深く、強くなったのだ。昨2015年、日土合作の映画「海難1890」が公開され、百年の歳月を超えて、その史実は一層リアリティをもってイメージされるものとなった。

写真 樫野崎 トルコ記念館など

灯台は世界的に、その船乗りたちの道標という生業から、人生の灯台といった比喩表現にもなり、詩情を醸し出す場所として観光の対象となっているが、樫野崎灯台もまた、感慨深い観光スポットだ。

樫野崎灯台

1870(明治3)年7月8日初点灯という、日本最初の石造の灯台。日本の灯台の父、スコットランド人のリチャード・ヘンリー・ブラントンが設計したその姿が、険しい岬にあって優美なコントラストを醸し出している。併設されている官舎の壁には、そのさらされ続けている自然の荒々しさが刻まれる。脇の、広く太平洋を見渡す眺望が楽しめるらせん階段の展望台は、2002年完成。

灯台の周囲にユリが咲いていたが、これは建設当時のイギリス人らが植えたものだという。150年近い歳月を超え、灯台とともに岬の厳しい風雨にも耐えて、今なお咲き続けているのだ。

写真 樫野崎で
写真 樫野崎の駐車場で

つれて行った飼い主は感動しきりなのだけど、カブ君にとっては、海の香りこそすれ、飛び込めるでなし、あまり楽しい処ではなかったかも知れない。まぁそれでも、テクテク歩くには歩いたけどね。駐車場に戻ると、脇で近隣の方だろうか、キンカンシャーベットを売っておられた。歩いて汗ばんだのでいただいたら、柑橘のナチュラルで素朴な味わいが、とても良かった。

写真 トンネルとトンネルの間では、海も遠望

旅が広がる新しい道路

帰路は、紀勢自動車道のすさみ南ICから南紀白浜まで、真新しい無料区間の道路を利用してみた。正直、これは「ワープ感覚」。往路のくねくねした海岸線とは打って変わって、山間のトンネルだらけの自動車道。時折、トンネルとトンネルの間から南側を望むと、海が見えたりする。これほどの道を良くも造ったもんだと思うほど、険しいところを貫いた道だった。

宿に帰着したのは、丁度良い頃合い…4時頃だっただろうか。ベイリリィを起点としたゆったりペースの日帰りドライブコースとして紀勢道を加えてみると、また新しい旅が楽しめそうだ。

写真 和牛しゃぶしゃぶ

樫野崎の思い出に浸りながら、温泉と夕食

一風呂浴びた後、二泊目の夕食もまた、豪華。カブ君にも、DogKitchen製のメニューをメインにした、ワンプレートディナー。

いつもの、食べきれないかと思うほどの量には本当に恐れ入るが、そればかりではなく、実は微妙にクオリティが上がっていた…ように思う。

アワビのワタにはクセがなく、新鮮そのもの。和牛しゃぶしゃぶも、肉が頃合いの美味しさで、堪能できた。

写真 二泊目の夕食
写真 本日終了

満腹する頃には夜のとばりも降り、カブのイビキととカエルの合唱が、更けゆく夜のBGMだ。

テレビをつけるでもなく、ゆったりまったり。缶ビールをちびちびナイトキャップに、のんびり休暇。かくて、二日目の夜も、いつの間にか眠りに落ちていた。

つづく
其之壱 | 其之参