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Sunday, July 10, 2011

Panasonicの電動アシスト自転車に乗って、かれこれ3年と5ヶ月。二度目のバッテリー寿命限界が近づいて、そろそろ新規格の一台をと思うようになった。物色しているところに、YAMAHAから… バッテリー寿命が倍に伸びたモデルが登場。電動アシスト自転車の選択上、最も肝心な課題の一つがバッテリー寿命だと実感していただけに、これは嬉しかった。

早速Webサイトを閲覧するなどして、情報収集。物色したミニベロタイプでは、CITY-Xが良さそう。どうやら、ブリジストンヤマハに全く同じ製品があるらしいと判明した。販売店は、通販で買った前の自転車を嫌な顔一つせずに修理してくださった近所のバイク屋にしようと心に決めていたし、値段を聞くと通販と大差はなかったので、YAMAHAを即決、注文した。

だが、その納車までには、一悶着あった。発注した車体色では納期が一ヶ月以上延びるのが、発注二週間後に判明。この時点で既に二週間待っていて、古い電チャリのほうは日々、バッテリーの衰えが実感されるから、一ヶ月以上待つのは厳しい。白なら2週間ほど。黒か赤なら、2〜3日という。黒と赤はブリジストンとヤマハの共通色なのだけれど、この際、やむを得ない。ま、実際のところは、何色だろうと構わんのだけれど、確かにこのモデルは黄色が似合うようで、生産数の想定を上回ったのは、ママチャリと違ったジャンルでのマーケティングミスとも言えるんじゃないかな。

かくて、更に待つこと三日で、PAS CITY-X納車。夕方受け取って、早速、帰路の登りを経験した。

新規格等でどう変わったかと言えば、確かにパワーはアップ。これまで、スキーのクリスチャニアのようにジグザグに登るしかなく、時として、高負荷に安全回路が働いたのか止まってしまうようなところでも、直登可能になった。

ここで、多くのママチャリユーザーのためにも、ギア比について苦言を呈しておかねばならない。ローギアは、論外というほどのレベルで、まだ高過ぎる。これがPASだけではなく、ほぼ全ての電動アシスト自転車に共通なのは、備えたシマノ製内装3段変速機、インター3のせい。想定している坂の傾斜が甘いどころではなく、荷重のある状態での登坂を実地で試しているとは、到底思えない。

相当きつい坂だと、犬がトロットで登る速度では登れず、もっと速度を出さないと走らない。つまり、設定してあるアシストゾーンが完璧に間違っているのだ。「こりゃ実際に本当にきつい坂は経験してないな」と、はっきり感じる。実際に試して、体験していたら、こんなギア比にはできないだろう。かなりの主婦が、子供を乗せたら踏むのが辛いだろうほどの負荷だし、坂道発進も辛すぎる。結局、安全・確実に登坂するには速すぎる設定なのだ。

こうなるのには、考え方の根本に間違いがある。要は、ゆっくりで構わないから楽に登りたいのが、実際。電動アシストなら登れるんじゃないか、という幻想を現実にするには、4速にするなり、3速のままでもギア比のレンジを広げなくてはいけない。今はまだ、パワーは上がったが、ローでも坂道にはまだ重たいギアなので、不必要に重いペダルが踏めるなら、坂道でも速度は出るという、性格的に歪んだ乗り物だ。寒冷地仕様のように「坂の町仕様」のギア比レンジが低い方に広いモデルを用意して欲しいと、心底思う。無論、新法規対応で良くはなっているのだが、法が変わってから二年待ってもまだ、理想とする合格にはほど遠くて、ちょっとガッカリ。

この、電動アシスト自転車登坂力問題は、被災地復興案の「住宅は高台に」にも関連する。高台に住めばという案には、移動手段の思考が抜けている。誰もが自動車を使えるとか、公共輸送機関で事足りると思うのは、大きな間違い。むしろ、そこを登れる、無免許でも使える何か、工夫が要るだろう。例えば西宮名塩には、傾斜エレベーターがある。他にも、住宅地で傾斜エレベーターが備わった例もあったかと思うが、しかし、駅まで5分、余計に待てるだろうか。或いは、子供を連れて動かねばならない主婦の移動範囲とそれは、必ずしも一致しまい。

電チャリは極めて有望な答えだが、まだ未完成が結論。電チャリの話で多くが「もっと速度を」というようだが、それこそ自分の脚力による趣味的体力勝負であるべき面。一方、「もっと登坂力を」は、脚力だけでは片付かない、生活に根ざしたニーズ。なんせ、お母さんたちは子供を乗せて坂を登る。私は犬の散歩に使っているわけだが、周囲に「あ、登れるんだ」と錯覚させている罪すら感じている。何がなんでも、オプションで既存ユーザーにもエクストラ・ロー・ギアを与えて欲しいし、アシスト領域を決めるプログラムを改善すべきだ。さらに、開発者自身に、そういうニーズを拾えるよう、本当にキツい坂で、実際の利用状態に近い想定で試走して頂きたい。

旧規格では法的制約に問題ありだったが、今は、法的な面では、アシスト具合の制約は解消されていると言って良いだろう。値段が下がればもっと嬉しいが、とりあえずバッテリーも改善されてきた。残る課題が、この「登坂性能」なのだけれど、それこそが、電動アシスト自転車が求められる最大の必然性・必要性なのだ。

フロントブレーキ

▲モジュレーターが備わったフロントブレーキ

CITY-Xそのものを見れば、全体に高品質。ブレーキなど、一つひとつのパーツで、値段なりのクオリティが感じられる。フロントにはパワーモジュレーターSM-PM60が備わる。単体では安価な部品とはいえ、あるとないとでは大違いのVブレーキ改善装置。リアは、ローラーブレーキ。

握り具合の良いラバーグリップが、ブリジストンのロゴ入りなのはご愛敬。スタンドで立てる時の不安定さは、CITY-Xでも共通。道路の傾斜などに敏感で、うっかりするとすぐに倒れる。前輪が回らなければバランスは崩れないので、ベルクロテープでグリップとブレーキレバーを括って、ブレーキロックにするとか、何か策はないものだろうかと思案中。

写真

▲リアはローラーブレーキ

自動点灯・消灯のソーラーチャージ式テールライトは、安全上大いに結構。そして、車体全体で、自転車と隔たりを感じさせるほどの剛性感があるのに20.5kg程度に抑えられているのは、(自転車としては異様に重いとはいえ)好印象。

ハーネスはフレーム内を通してあり、見た目もスッキリ。但し、広告などの写真が真横から撮られているのもさもありなんで、横からのスタイルに比べ、上から見ると、トラス様で強度こそありそうなものの、メインフレーム部を両脇から挟んだようなサブフレームの見かけは、さほど良いとは言えない。特に、無骨な溶接跡は気になった。ここを包み隠すような、樹脂部品にボトルホルダーがくっついたようなアクセサリで隠すと、もっと見栄えがするかも知れない。

写真

スポーティサドルの座り心地は、これまで乗っていたのと比べ、雲泥の差。電池の減りはゆっくりで、前のPanasonic リチウムViViでは新品バッテリーで3回。数ヶ月後には2回の登坂帰宅で要再充電だったのだが、これなら4〜5回の散歩はこなしてくれそうな、余裕の容量。くたびれると一回も上れなくなる坂を上がっても、残量表示は満タンのままだったほど、最初の印象が違った(7月12日追補 : 結局、キツい坂を試しに登ったりしていたせいもあるのだろうが、充電までの登坂回数は4回だった。いかに手強い坂か、お分かりいただけるだろう)。但し、このバッテリー、より大容量のものに交換可能。標準は4.3Ahで、最大は8.1Ahだから、必要ならば大容量のものへの変更が叶う。

総じて、今、この時点で得られる電動アシスト自転車の品質としては、最良レベルのうちの一台だと言って良いだろう。自転車を諦めていた坂の町の住民に自転車のある暮らしを与え、さらにポタリングでの観光など、楽しさを広げる ─ 電動アシスト自転車は、もっともっと成長し優れた製品になっていって欲しい、文明の利器なのだ。