GOLF1の車重は、760kg。1.6リッターで54馬力という数値は、当時いかにも非力だとして、存外に嫌われた。一方で、だが世界最小のディーゼルと言われたそのエンジンがもたらす燃費はとても良くて、経験では最悪でも15km/lを切ることはなかった。
しかし、その後に初代いすゞビッグホーンに乗って、私は、とある疑問の答えを見いだした。それは… 車重と燃費の関係である。
もともと、軽い車は燃費が良いとされる。不要な荷物を降ろせばなおさら、燃費は良くなる。一人乗りのほうが四人乗りよりも優れるが、まぁそれは人数効率を勘案しても良いだろう。九人乗れて3.5km/lのVW VANAGONは、31.5km/L走る車9台を九人が別々に走らせるのに等しい…財布の辻褄だけなら。実際には、常に九人乗車するわけじゃあないだろうから、そこはかなりさっぴかなくてはならない ─ 要は、九人フル乗車というような機会がどれほどあるか、人それぞれだ。
しかし、そうした要素よりもさらに影響するのが、「必要な積荷」。私は昔、商業写真撮影を生業にしていて、たくさんの機材を積んで出張撮影に出向いていた。その荷を積んだ時の燃費の悪化率は、GOLFのほうがビッグホーンよりも大きかったのだ。
そこで、一つの仮説を思い立った。もともと車重の軽い自動車は、運ばねばならない荷の増加割合に対して敏感に反応し、重たい車は反応が鈍いのではないか、と考えたのだ。これは、元の車重が600kgの車に120kgの荷を積んだら増加率は+20%なのに対し、1.2tの車なら+10%に過ぎないということ。つまり、車重が倍になっても積載負荷は半分で、だから積載量による燃費悪化が少なかったのではないか。
これをきちんと実験したデータは、残念ながら見当たらない。しかし、データがないことは、そのデータが不要だという意味にはならない。
重たい車は、往々にして軽い車に比べ、燃費は悪い。一方で、荷を積む前提がある車種の場合には、トルク重視の傾向もあるだろう。トルクがあれば、積載量が増えた時の加速性能が補われる。トルクが乏しければ、パワーを得るべく高回転域を使うが、トラックのように低速トルクがあれば、ゆっくりしっかり加速できる。そうしたところも加味してみると、単に公表燃費で劣るからと切り捨てるのは、どうも違うように思える。
さらには、ハイブリッド。バッテリーとモーターを追加で積んで、一見燃費の良いハイブリッド車に目一杯積んだら、燃費はどうなるのだろうか。はたして、内燃機関の積載負荷による燃費悪化率のように、車重に比して増加率が少なく燃費悪化率は少ない、というような結果になるのだろうか。それとも、むしろ重量増加による影響は電力消費を増やし、内燃機関の出番を増やすからだか何だか、燃費悪化率が高くなるのだろうか。
1.5t積トラックに1.5tフルの荷を積んで走るのと、4t積トラックに1.5tの荷を積んで走るのでは、さて、どちらが燃費で優れるだろうか。或いは、大きくなった軽自動車と小さめの普通車で、積載時燃費悪化率はどう違うだろうか ─ 要は、テストベンチ上での値や論理値の燃費ではなく、満タン法でのテストドライブ燃費でもなく、空荷・一人乗車燃費とは別に、フル積載・定員乗車燃費という目安があっても良いと思うのである。
Posted by nankyokuguma at 14:39:45. Filed under: Vehicle
