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Sunday, April 27, 2014

三年前、否定的意見が出て来ると記したシーザー・ミラン氏 の著書「あなたの犬は幸せですか」について、記した。その中で、その否定的な意見が掲げていた「DNAに刻まれた」(原著ではThe concept of a "pack" is ingrained in your dog's DNA)について、私は「文字通り受け取ってしまった反論もあるようだ」として、「「本能の奥深くに根ざした」というような言い回しと同じ」だという見方を示していた。ところが… それを書き変えねばならない事になりそうな、研究結果が出てきた。Scientists have found that memories may be passed down through generations in our DNAである。まだ「may」が入っているので分かるように、推測ではあるが、極めて興味深い。

アメリカ合衆国で最難関大学の一つといわれる、ジョージア州アトランタに本部を置く、1836年創設の私立エモリー大学は、世界有数の疫学研究機関CDC(Center of Disease Control and Prevention)や国立ガン研究センター(Winship Cancer Institute)本部が隣接した、疫学研究の一大拠点だが、そんな同大の薬学部(School of Medicine)が示した最新の研究結果によると、ある種の情報はDNAの化学的な変化によって生物学的に遺伝している可能性があるというのである。

マウスを使った実験では、トラウマとなるストレスフルな経験 ─ その実験では桜の花の香りの恐怖 ─ を学習した情報がその子孫へ受け継がれることが分かった。親世代の経験は明らかに次世代の神経系統に受け継がれているというのだ。研究者は現在、いかにして情報がDNAに織り込まれるのかを解き明かそうとしており、同様のことが人間の遺伝子においても起きているかどうかも、突き止めたいそうだ。

臨床遺伝学で著名なロンドン大学のMarcus Pembrey博士は、この研究発表を生物学的な記憶伝達の「否定しがたい証拠だ」として、人における恐怖情報の遺伝といえば、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の遺伝につながるものだったりもし得るのだろうから、この研究が求めているところは、神経精神病学的な異常の解明に、とても重要な入り口となることを示唆されたという。

これからのDNAにまつわる研究では、まだまだ私たちが驚くような事実が解明されて行くことだろう。私たちも、あれこれ考え論じるための基礎知識は、日々更新されるものだと覚えて、認識をアップデートし続けたいものだ。きっと、老化予防にも効果するだろうし、と、ちょっと期待。

冒頭の、ミラン氏の著書に出てくる「DNAに刻まれた」という表現は、それが実験で示された恐怖情報にまつわるものではないにせよ、もはやこれで、頭ごなしに「証明されていない」と一笑に付すわけには行かなくなったと言えるだろうし、言い回しという私の理解も違ってくる。さらに、具体的にそのDNAに織り込まれるのであれば、叶うならば負の記憶を継承するようなブリーディングは避けたいというように、違った角度からの取り組み、応用すべきところが見えてくるのではないだろうか。