荷が積めて、移動し、現地で働いて、また移動する ─ そんな行動を可能にする“疲れない車”であることも、大事な要素だ。運送業者にとっても、いかに疲れないか、運転が楽か、は大きな課題の筈。疲労度を左右する第一は、座席。さらに、直進性能や旋回性能といった走行性能がこれに乗じる。
人間が操作に係わる要素が減れば…
性能を左右する曖昧さが排除され、燃費も一律になる。いすゞがかつて開発し発展技術を搭載し続けているNavi5という電子制御クラッチ機構は、トラックには優れモノだと思う。もともと、乗用車であってもマニュアルシフトであれほど円滑なクラッチ操作のできるドライバーは少ないだろうに、人間というのは勝手なもので、機械がやるとなった途端、まどろっこしいと拒否してしまい、乗用車への採用はなくなった経緯があった。最近は競技車両も然りだが、シトロエンやプジョーなど類似の機能の発展系を採用しだしているメーカーも少なくないし、Navi5自体もまた、時と共に改良されているだろうと推察するところだ。
自動車やオートバイという乗り物では、人は、煩わしい機械操作から解放されたとしても、思い通りに動かす操縦の楽しさから切り離されることを嫌がる。つまり、自動化はマイナス要素にもなる。トルクコンバーターを挟んでいては燃費が向上しないから、電子制御クラッチは、内燃機関を使う今の技術において、量産可能なほぼ唯一の道かも知れない。しかし、動力が電気モーターになれば、話が違ってくる。中間で動力伝達ロスを発生しないハブモーターが究極だが、決して新しい技術ではなく、フェルディナント・ポルシェ博士が1900年のパリ万博に出展されたローナー・ポルシェで実現していた。これは昔CCV誌にも書いたフレーズだが、電気・石油・蒸気などの動力源は自動車の黎明期には切磋琢磨しあっていた。ガソリンが突出したのは技術的に優秀だったからではなく、単にアメリカの地下から偶然噴き出してくれたからに過ぎない。だから、もしさぼらずに他の動力源の開発努力が地道にでも続いていたなら、今頃こんなに慌てずに済んでいたかも知れないじゃあないか。
走行性能の面では、全天候を考えると四輪駆動車。SUVが廃ったのは、燃費が悪いだけではなく、もともと四輪駆動の動力性能や積載能力を必要としていない人を巻き込んで、豪華絢爛路線に突っ走ったからではないのだろうか。実際には、雪国など生活の脚として利用するために四輪駆動が必須という土地柄も、この国土にはある。ちなみに、気温があまりに低いと雪が溶けず、雪路面もアスファルトのようにグリップする。ところが、日本の程度の低気温では踏むと溶けるので、スリップし易い。おまけに傾斜した道が多いので、二輪駆動では上り下りで特性が変わってしまい、下りは制御不能で突っ込み、登りは滑って上がれない状態に陥り易い。それに梅雨時や大雨を加えると、この国の気象条件では全輪駆動は必須ではないか、と思えるほどだ。
慶応大学の電気自動車研究室が中心となって開発した八輪のELICAは、八輪駆動・六輪操舵で、最高速度370km/hを記録している。走行性能を犠牲にせず、快適・安全かつ環境問題をもクリアする車作りは可能なのであるし、取り組みは既に始まっているのだ。
Posted by nankyokuguma at 00:10:00. Filed under: Vehicle
