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Wednesday, November 05, 2008

総務省が公表するインターネット利用者の統計調査結果は日本のインターネット普及率が高いと自画自賛するが、実は…

普及率が高いのはブロードバンド接続サービスだけ。FTTHは確かに安価だが、携帯電話のメールユーザーを含めているため、やはり国際性のないデータとなっているようだ。アイティメディア株式会社が提供する@ITという情報サイトに掲載された西村賢氏の記事「iPhoneやAndroidは何がケータイと違うのか」を拝読して、私だけがそう思っていたのではないと分かりはしたのだけれども、なんとも悲しい。

同記事は調査会社ニールセン・モバイルが2008年7月に発表した国別モバイル普及率を例示していた。それによると、調査結果の1位は米国で15.6%。2位は 12.9%でイギリス、3位が11.9%でイタリア。以下ロシア、タイ、スペインと続いて、最下位インドネシアが1.1%。日本、韓国、北欧はものの数に入っていないのだが、これは、携帯電話ユーザーをサンプルとしてカウントしていないかららしい。

超ローカル・ルール

NTTドコモやauのメールアドレス基準は、RFC2821というインターネット電子メールの国際通信基準に準拠していない。これでは、インターネットというインフラを利用しながら、日本の携帯電話という閉ざされた世界と同じことだから、カウントされないのも当然かも知れない。

電子メールだけを見ても基準外なのだが、実際には、パケホーダイは決まった対象サイトだけといった規制もあり、また、対象Webぺージのファイルサイズなどから、実際には携帯で閲覧できるWebサイトの範囲は限られる。キャリアや機種ごとに表示できる画像形式や画像サイズ、HTML自体のファイルサイズやタグもまちまちだったりするのだから、作る側はたまったものではない。それらを嗅ぎ分けプログラムを仕掛けて振り分けたり、或いは自動的に画像形式を変換するなどして機種適応させて配信するサーバー側プログラムがあったり、まぁ考えられる策はあるのだけれど、ちょっと考えれば、こうした機種ごと適応では生産性効率の悪いことくらい、すぐに分かる。本来はHTMLとしてW3Cが取り決めた基本があるのだから、それに準拠すれば良さそうなものだ。そりゃあ、パソコンのブラウザにだってバグや非準拠の部分はあって、そう何もかもがW3Cの取決め通りにはならない。けれども、携帯電話ほど酷くはない。

先頃、Google携帯“G1”が発売される一方、先頃ソニーエリクソンが日本の携帯市場からの撤退を表明した。真空管じゃあるまいし、携帯電話は少数が残存者利益で食いつなぎ得るような分野ではなかろう。米国主導よろしくiPhoneやG1が先鞭をつけたモバイル端末を見ても、この先、少なくとも携帯で閲覧するWWWはフルブラウザが当然になって然るべきだし、メーカーは、飽和しているこの国の市場だけを見て開発を続けるわけには行かないのだから、自ずと、その方向へ収斂されざるを得ないように、私には思える。

自ら撒いた種

実は、その昔Palmが全盛だった頃、既にPalmで携帯電話を兼ねる機能は出来ていた。2タップで、住所録から選んだ相手に電話、という筋書きだ。通信CFカードはあったのだから、通話できない筈がない。では、なぜ実現しなかったか。キャリアが拒んでぶっ潰したのだ。キャリアは自分で決めた土俵とルールで専用機種を開発させ、ユーザーを囲い込んだ。SPAMであっても課金できるからとメールのフィルタリングは御上のお達しが出るまで垂れ流したし、WWWサイトも専用に囲い込んだ。その結果、続々とメーカーが撤退し、ガラパゴス状態と揶揄される現状に至っているわけだ。

iPhoneもG1も、昔のPalm路線の延長線上にある。インターネット接続されたモバイル端末があるのだから、Skypeでも何でも通話が出来て当然。機能を通話だけに絞り込むならいざ知らず、インターネットの軒先を借りつつ取決めに準拠しないビジネスだから、始末が悪い。昔、「電話はどこまで言っても電話だ」と言い放ったNTT DoCoMoの社員がいた。今、言い返してあげよう。「電話は所詮データ通信の一部だ」(Skypeを見たまえ!!)

巨大パイが無視されている

もう一つの携帯電話の欠点は、画面の小ささ・文字の小ささ。巨大なパイを占める団塊世代は老眼世代。私も然りだが、もはや裸眼では携帯の画面は見えないし、文字も読めない。私自身はiPhoneに変えて、ようやく見えるようになって少しホッとしているが、そんな見えないモンを使えというほうが無茶だ。操作の煩雑さや分かりにくさもさることながら、それ以前の障壁があまりに巨大で、器具としての体を成さない。巨大パイを成している団塊世代を対象に含めて考えるなら、画面表示サイズは、充電と並んで最初にクリアされなければならないにもかかわらず、未だに解決されず門前払いされている部分(ちなみに、充電はデバイスを持ち歩く習慣のない方々には大きな障壁であるが、これはまた改めて)。だってねぇ…そこにユーザーがいると分かっていながら、電子的に表示されているだけの画面の文字サイズを任意に変更できないなんて、おかしいじゃないか。

正念場

金融危機から世界恐慌という恐ろしい嵐の今、課題は携帯電話市場だけではない。コンピュータやITにしても、いや、あらゆる業種において、人口の減少傾向と相まって、誰もが市場収縮という大きな課題に直面している。日本はバブル崩壊後10年を失ったというのに、アメリカにつられてまた10年を失うのだろうか(実際には15年を既に失っているかのような向きもある)。対応が早かったから3年くらいで済むのではないかという論もあるが、こればっかりは、まだ分からない。ただ一つはっきりしていることは、インターネットなどで世界中が情報に対してフラットになっている以上、もはやそれ以前に戻るようなわけには行かない、ということだ。超資本主義にともったモラルハザードを教訓に、明日を切り開く道標を見いださなくてはならない。その道標は恐らく、サイバースペースのどこかに、既に誰かが立て始めているのではないだろうか。

テクノロジーは恐慌とは無関係に進んで行く。事業化の資金が得られにくくなったり、研究の進捗速度がスローダウンするといったことは懸念されるが、それでも決して停まりはしないだろう。ガラパゴス状態の携帯電話にしがみついていたら、世界との差はどんどん開いてゆく。日本語ドメイン ─ 例えば漢字のTLD「.日本」を認めるに至っては、日本語IMEがなければアクセスの難しいドメインを流通させる。まるで、日本語を使える環境だけを対象にしたVPNをインターネット上に構築するようなもののように感じる。そんな動きの結果は、果たして元気(?)に疾走(勝手な独走?)する日本となるのか、それとも、もう一度10年…いや、それ以上を失う結果につながるのか …… 機会としては、恐慌被害が比較的少ない日本にとって、今はチャンスなのだけれど…