
携帯電話をノキアのPDA型G3、6630にしたのはつい先頃。3月の末からはなりすましなどのメールへの拒否機能がvodafoneのサービスに加わり、ようやく少しはマシになったが、それまでは、電話をかけようと思ったとき、最初の仕事は不要着信メールの削除だった。着信通知ありにしていればかけるその時に先ずメール削除とはならないが、今度はしじゅうスパムの削除に追われてしまう。いつも「こんな機能は要らない」と思う。
今や、携帯電話がないと連絡がつかず、仕事にも差し障るという方がほとんど。若年層では友人との絆が携帯の電波だったりもするのだろう。だが、あの小さなモニタと小さなキーで、メール文の打ち込みに四苦八苦する人は決して少なくないと思う。高校生など、驚異的な早さで記述できるなんて話も聞くが、操作が素早いからといって、キーボードで文章を打つほどに早く書けるわけではないはず。良く使う短文をそのまま登録するなどの補助機能を使ったとしても、業務の千差万別のメールにきちんと対応するなどという次元ともなれば、まず不可能だ。
これほど不完全で不便な機能の「機能でござい」との押し売りは、iModeにはじまった電子メールの歪んだありように起因する。DoCoMoなどキャリア(回線提供業者)は、例えスパムでも収入源だと、自らその除去に乗り出そうとはしなかった。あれほどITでは駄目だと感じる政府・官庁が動いて初めて、迷惑メールの防止機能を提供しだしたのだ。こんな不便なモンを、そんな根性で売った企業の親玉がIT普及に貢献したと受賞するなど、言語道断だと思うのだけど。
PDA型のケータイでは、本来はPalmのVisorがとっくに実現していた機能がインターネットアクセスと電話通話の同居。ところが、日本のキャリアはPalmによる通話を徹底的に排除し続け、日本でしか売れない携帯機器の製造をメーカーに強要して自分のビジネスを強引に成り立たせた。おかげで、メーカーは海外での競争力を奪われて未だにシェアが小さいし、ブッシュマンも使っている便利なPalmは、ついに日本市場から消えてしまった。海外でTreoを使っている人を見かけると、本当に羨ましくなる。Palmの機能と携帯電話の機能が融合してくれれば、それ一台で事足りる。本邦ではようやく6630(Vodafone702NK)がそれに近い品として登場したわけだが、使っていて、やはり、操作性は到底Palmに及ばないと感じる。
ケータイからインターネット接続で情報を得るのに、最初に感じた障壁は日本語だった。URLを打ち込もうにも日本語入力モードを英語へ変更しなくてはいけないのだ。普通のケータイでは英語標準には設定できないから、これは不便きわまりなかった。6630では英語標準の設定へ切り替えておけるので、この分だけちょっとはマシ。あんなキーでメール文章を打ち込もうなんて思っていないし、先ずやらない、ということもある。英語優先なら、ちょっと急いでWebサイトにアクセスして確認したいことがあっても、まぁ我慢できる。しかし、なんでURL入力時は自動的に英数字入力、というような仕様にできないのかね。
ケータイからインターネット接続で情報を得る二つ目の障壁は、キャリアのポータルだ。あんなものはせいぜい、ブックマークのうちの一つで十分。たいてい、アクセスした最初に行きたいサイトは、別にある。三つ目の障壁は料金。契約によっては、あきれるほど高い。四つ目は、到底記憶できないようなメールアドレスにしなくては迷惑メールが止む事なく届くこと。メールアドレスは覚え易いほうが良いに決まっているのに、自分たちがフィルタリング機能に消極的なのを棚に上げて、あんなメールアドレスを使わせるなど、言語道断。
インターネット接続に限らなければ、今どきケータイで困ることはもっとある。存在が迷惑になることすらありそうなのが、カメラ。なくても良いものがことごとく「付いてますよ、便利ですよ」というのは、筋が違う。今撮ったでしょ、なんていいがかりをつけられたら、どうしてくれるんだ。付いていない機種が選べないというのは、非常に不便なのだ。さらには、インターネット接続だけで標準メールなしという料金設定がないことも、大いに迷惑だ。
これほど不便なものに、事もあろうにキャリアたちは更に、通勤・通学定期の機能や小額決済の機能を加えだしている。持ってない者はこの社会に参加するなとでも言うのだろうか。あまりに小さな文字や操作ボタンの上に多機能すぎて使えない高齢者向けに、単機能のケータイを出して大ヒットしているツーカーSを見れば、本来あるべき姿も見えてくるだろうに。
有り難くないものを仕方なく使っているのなら、「不便だ」「ちっとも有り難くない」ということを、もっと声高に言わなくちゃいけない。黙っていると「納得してお使いなのでしょう」と畳み掛けられてしまう。ツーカーSにしたところで、市場が飽和してようやく出てきた。良く「ユーザーは自分が本当に必要としているものを知らない」と言われる。使った事もない代物を思い描いて、あれも欲しいこれもできたらと並べた挙げ句、使いにくい道具になるのが典型。だが、ことケータイに関しては、「メーカーはユーザーが本当に求めているものを知らない」のだ。あのチマチマしたボタンを押して文字入力するのと、スタイラスでグラフィティ入力するのと、どっとがスピーディか、今更言うまでもない。もっとも、日本語の手書き入力となると、所要時間は五十歩百歩かも知れないが…
6630(702NK)は日本のケータイ市場に、PDA型の「大人がビジネスでも使える機種」という選択肢の入り口を“やっとこさ”もたらした。だが、Symbianという新出タイトなOSよりも、永らく培われてきたPalmのほうが使いでがあるのは、言うまでもない。
さて、では6630を発売直後から持ってきて、何が欲しくて何が欲しくないか。
GPSは欲しいが、カメラは要らない。GPS機能がBluetoothでデジカメと連携してくれれば、撮影画像に自動的に位置情報を収録することが可能になる。一方、ケータイのデジカメ機能で撮影業務が満足できるわけがないのだから、要らない。最低限、カメラを使っていないことを明示できる機能 ─ レンズキャップ機能を備えるべきだ。でないと、盗み撮りを疑われるなど、有り難くないことが起き得る。
通話の即時ボタン一つ録音機能(或は常時録音設定)やサウンドファイル転送機能は欲しいが、iPodのような音楽聴取機能は要らない。iPodはiPodだから楽しいのだ。音楽を聞きながら何かしたいってことはあるけれど、その時、電話に追っかけてきて欲しくはないからね。
パソコンと接続できるのは有り難いが、Macが駄目なのはなんとかして欲しい。こぉしたデバイスが好きな人種って、Macユーザーのほうが多いだろうに。
アドレスブックのシンクロは、特定条件設定で、パソコン側で事前に取捨選択できるようにするか、ケータイ側で条件抽出する機能が必要だろう。さもないと、山のようなアドレスで却って電話をかける機能が使いづらくなる。急な電話をかけかねない相手だけを抽出できないと、不便きわまりない。つまり、全アドレスブックと、ケータイから電話をかける相手についてのアドレスブックの2種類(同じデータベースから一方へは条件抽出)が取り出されないと困るのだ。
Bluetoothの接続インターフェースは、分かりづらいとまでは言わないけれど、もっと簡単かつ安全にならねば困る。デバイスの存在・再接続も不安定(6630とPlantronics製M2500は不安定だというが、同じBluetooth規格じゃないのか)。どぉもイマイチの感あり、だ。せめてヘッドセットは意識外で自動接続できて欲しい。
画面は、PDAを標榜するなら、もうちょっと大きくなくちゃ。
結局、6630はケータイにPDAの要素を加えたものであり、私が求めている“PDAに通話機能がついたもの”ではないのだ。もっとも、PDAの処理能力次第ではあるが、インターネット接続できるPDA用のSkypeが出てくれば、もう通話料金なんて払う必要はなくなる。PHS同士の通話が無制限なのも、似たような理屈なのだろう。通話は音声データによるIP通信の一環というようにインフラの配置そのものが変わってしまえば、これまでの電話というテクノロジそのものが不要になる。実際、見ようによっては石器時代のような印象も、ないではない。ただ、既にそうなっていると言い切るには、少々心もとない通話品質などの実態があるけれど ─ ブツブツ切れるのは、今のDoCoMoだって一緒だしね。
人がどこにいようと常にIP接続していられるユピキタス時代の完全実現まで、もうそんなに遠くない。この地球上、今やインドの田舎だろうがアフリカだろうが、衛星によるインターネットアクセス機能はそれなりに提供されている。そんな環境の中でケータイはどのような形態で、どう存在するだろうか。そして、どう存在してくれたら私たちは有り難いと感じてそのデバイスを使うだろうか。開発者には、目の前の課題の克服に追われる現実はあるだろうが、ちょっと離れた近未来を想像し、近未来のユーザーになったつもりで方向性を見いだしてほしい。ほんの僅かな使い勝手の違いですら、デファクトスタンダードとなるかどうかを左右するほどの切り札になり得るのだから。
Posted by nankyokuguma at 14:26:31. Filed under: General
