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Tuesday, October 29, 2019

GFX100が出たのが、今年の6月28日。すぐに手に入った幸運な人は少ないだろう。筆者も、首を長くして一ヶ月を過ごし、7月27日にようやく入手できた。だが… 撮っていて一億画素のパワーを感じるより先に、とても不思議な結果を得て、悩みのほうが大きくなった。それは、ボケだ。

イマドキの流行は、背景のボケ。ポートレイトしか撮らんよぉならそれでも良いのかも知れないが、私はパンフォーカス的な結果を良しとしている。だから、背景のボケが欲しいからフルサイズだ中判だというのには、正直辟易している。ぼかして写すロジックは簡単だが、絵柄として「意義あるボケ」を背後に、対象を「美しく」写すのは、また次元が違う。

だが、それとは全く逆に、パンフォーカスが欲しいと思うと、実に苦しい思いをしてしまう。アオリを使うとか、被写界深度合成をやるといった手があるにはあるが、一瞬をパンフォーカスで定着するには、どちらの手も使えない。GFX100では、それどころか、経験値としての「これくらいの被写界深度はあるだろう」という読みが、全く通じない。

ここで、一体どうして、銀塩時代には6x6や6X9、6X12だろうが4X5だろうが、あまり苦しい思いをすることなく、自然にキメられていたのだろうという疑問が生じる。

フィルムで同じ焦点距離のレンズで撮った写真は、鑑賞時のプリントサイズが同じなら、ボケの拡大率が低い大フォーマットのほうが被写界深度は深く見える。銀塩でも、粒子が粗ければ被写界深度は深く見え、粒子が細かければ被写界深度は浅く感じられる。まぁ、これは良い。だが…

APS-C = 23.6 X 15.8mm
ハーフサイズ = 24 × 18mm
フルサイズ = 36 X 24mm
デジタル中判 = 43.8 X 32.9mm
645 = 56×41.5mm
6X6 = 56x56mm
6X7 = 56x70mm
6X9 = 56x84mm
4X5 = 100×125mm

というサイズをスプレッドシートに置いてあれこれ計算してみると、デジタル中判とはいっても対6X6面積比では46%で、半分の面積もない。それなのになぜ、あれほどGFX100の被写界深度は浅いのか。

銀塩フィルムのアナログな世界をデジタル撮像素子の画素数にすると、根拠は曖昧ながらおおよそ、せいぜいが500万画素程度らしい。これを面積比で換算すると、GFX相当の銀塩の画素数は1千万画素以上となる。そこに桁違いの一億画素の素子が並ぶのだから、許容錯乱円が得られる絞り値は遙かに小さくなる。或いは、どこまで絞ってもボケるようにすら感じられる。

だが、銀塩の中判などで思いっきり大きく伸ばした写真でも、それほどのボケは感じたことがない。一方に絞りによる回折ボケ問題があるとはいえ、幾ら理屈をまさぐっても、銀塩時代になぜ、あれほど被写界深度の問題を深刻に考えずに撮っていられたのか、とても不思議なのだ。

ともあれ、一つだけとりあえずのヒント、対処療法を云えば、思っているよりも三段絞ること。三段絞るには、光の量は2倍必要(光は平方根で増減する)。デジタル時代だからスタジオストロボのパワーは小さくて良いなんて理屈は、これで終わったかも知れない。