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Saturday, October 20, 2018

SONYやPentaxが採用しているIBIS、ボディ内手ぶれ補正は、言うまでもなく撮像素子をブレとは逆方向に動かして、手ぶれを補正するものだ。レンズを選ばず手ぶれ補正が利くので、例えばオールドレンズを使う場合などには、有り難くユニークなメカだ。もちろん、アストロトレーサーやリアルレゾリューションのような御利益もある。ところが… 良いことばかりじゃあない。

撮影したつもりのフレームから、結果が大きくズレる場合がある。昔の35mmポジノートリミングで「どうだ」というような性質をひきずるスティル写真では、時としてこれは、とても困る。
また、ミラーのあるDSLRでは撮影前に止まって見えるわけじゃあないので、的を捉える意味では、レンズでのISのほうが使いやすい。

ところが、どうしたことかフレーミングずれの欠点を指摘する声は、問いたださない限り、ほとんど見聞きしたことがない。そこで、なぜだろうと考えてみた。

ズレが問題にならないのは…

  1. 動画系ユーザーが多い
    動画のミラーレスユーザー、特にテレビをターゲットとしたニーズの場合、「セーフティゾーン」をとらないと、切れる。受像器側がオーバースキャンのため、周辺部が表示されないのだ。その割合は、二割ほど。
    テレビ用のテロップ写真を撮影した経験があるのだが、その二割の枠は、想像を絶して大きい。
    当然、撮る側はそれほどの余裕を周囲にとって撮影するから、少々フレーミングからずれても、外れはしない。それに、編集時に枠を動かせば、救える範囲にほぼ収まるだろうこともある。だから、さほど真剣にこの問題を捉えないのではないか。
    一方、ミラーレスでないDSLRの動画撮影では、レンズ側で担った場合と大きく違ってしまう。この場合は、思いがけず大きくズレてしまいかねないから、ひたすらブレないようにするしかない。
  2. 気にしてない
    業者依頼でプリントする場合は特にだが、写真の紙サイズが2:3比率ではないこともあり、若干トリミングされる。それも含めて、さほど神経質にフレーミングを意識していないのではないか。
    モノクロネガ写真の紙焼きで、ネガの黒枠を残したプリントがある。ノートリミングだと示しているのだが、そこまでやる人なら、本人にはズレがはっきり分かっているはず。そこまで拘るユーザーは、少数なのだろう。
  3. 分かってない
    なぜか、撮ったつもりの枠と仕上がりでズレがあると思っても、何が起きたのか分かってない。だから、気にはなっても忘れられる。

おおよそ、思いつくIBISの大きな欠点が取り上げられない原因は、上の三点くらい。けれども、カメラ店で店員にフレーミング問題を聞いてみたところ、やはり分かって困惑しているユーザーは少なくないらしいから、興味深い。

やはりレンズ側補正


フルフレームミラーレスとして登場したキヤノンRのレンズ側手ぶれ補正では、コンデジに始まって、同社製一眼ではKissMから搭載されたCMOSセンサでのブレ検出補正、デュアルセンシングISとなっている。これは、IBIS優位と言われる要素の違うブレに応じたものだ。

そこまでやって補正してくれるとあらば、残る課題の、レンズ内手ぶれ補正のプリズムによる「僅かな」画質の劣化は、フレーミングとバーターに出来るモンじゃないだろう。実際、ISをキヤノンのレンズで初めて搭載した初代EF70-300mmISに始まり、ずっとレンズISを使い続けてきた所感で言えば、ISがあるから劣化していると、ISを恨みに感じたことなど一度もない。唯一困ったのは、初代で随分長らく使った後に、プリズムが剥がれて撮影続行が困難になった時だ。しかし、これもその一度だけ。

もはや、フレーミングを犠牲にしてもというのは、どこか違わないだろうか。キヤノンがRでIBISを採用しなかった見識を理解している要素から推測しつつ、今、改めて問題提起してみたいのである。