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Friday, November 14, 2014

時として、どうしてもiPhoneで撮らざるを得ない。なぜかというと、写真の専門家ならiPhoneのカメラにも詳しいのだろうと思われるからだ。
実は、iPhoneは電話派生のスマホで、カメラじゃない。だから、三脚穴もない。写真撮ってるときに電話かかってきたら、撮影は中断。撮影中に電話するのも、ダメ。長話で電池が切れた時には、同時にカメラもなし。そんな道具じゃあ、たまったもんじゃない。だから、私にとってはカメラじゃない。
だけど、聞かれたら答えてさしあげたい。それも… できるだけ正直に、体験にもとづいて。だから、これまでにもかなりのiPhone用カメラアプリを試してきた。これまでのところ、ベストはProCamera 。iOS8になって、露出の±もコントロールできるようになったので、ますます強力になった。
そんな時、三脚メーカーのマンフロットが、iPhone写真撮影で使用すべき5つのアプリという情報をフェイスブックで流してきた。そこで、そのうちの幾つかを試すことにした。

推薦されていたのはSnapseed、VSCO Cam、Camera+、ProHDR、それに、Slow Shutter Cam。
このうち、VSCO Camは既に試していて、微調整に入る手順などがまどろっこしく、直感的操作とは行かないと評価していたので、今回は除外。Snapspeedは、撮影サイズが小さく、あれこれエフェクトの種類は多いものの、それが逆に使いにくさになっていて、駄目。
Camera+も高品質画像を保存するというが、所詮jPEG圧縮データ。それに、やはりProCameraに比べると、少なくとも私は使いづらいと感じた。
というわけで、今回は残ったProHDRとSlow Shutter Cam、それに私の定番、ProCameraを試すことにした。

ProHDR (¥200)

HDRというのは、露出を違えた画像をコンポジットして(重ねて)、露出範囲を広げる技法。良く、とても荒い粒状性のおどろおどろしいHDRを見掛けるし、それがHDRだと思っている向きもあるかも知れないが、実は違う。あの、おどろおどろしい画像の大半はPseudo HDR(偽HDR)といって、一枚の画像に潜んでいるデータを抽出して、擬似的にダイナミックレンジを広げたかのように見せたもの。一方、本当のHDRはダイナミックレンジを広げる効果が大きい ─ 例えば、空が真っ白、枝葉は真っ黒というような写真が、空は青く、枝葉は緑に、となる。

ゴーストが出ている例
ProHDRは自動モードならばとても手軽に、マニュアルモードならば確実に、狙った画像を、特にマニュアルではほぼ、イメージ通りに得られる。一方、これにPseudo HDRのような仕上がりを期待するのは、間違い。そのためには、さらに他のアプリでエフェクトを加えるしかない。

撮影してみて分かったのは、このアプリがゴースト処理機能を備えていないこと。複数撮影するのだから、その間カメラが動いてはいけないのだけれど、カメラが動かなくても、風があれば木の葉や枝は揺れる。それが、二重露出したようなゴーストになってしまい、なんともみっともない。ゴースト処理がなかったNikonのデジカメ内蔵HDR処理なんぞは、ユーズレスと酷評された過去があるが、それと同じだ。Mac用ソフトウェアのPhotomatix ProというのがHDR処理の定番なのだが、それは、偏にこのゴースト処理の優秀さによる。将来のアップデートでゴースト処理がうまく行われるようになったら、その時には視野に入れても良いのかも知れない。

さらに、このアプリには最大の欠点があった。それは、Volume Controlでシャッターが切れないこと。「2回撮影するから、動くな」とメッセージが出るのに、肝心のリモートレリーズにVolume調整付き純正イヤホンが使えないという、とっても間の抜けた仕様になっている。

作例

Slow Shutter Cam ( ¥100)

そもそもiPhoneには、スローシャッターというものがない。ブレで動きを表現したりする他に、写そうとしている景色の中で動いているものを消したり、流れる水を表現したり、或いは、ペンジュラムや星野写真のように軌跡を写したりと、スローシャッターを使ってできる表現、その応用範囲は意外に広いのだが、マニュアルで遅くしようにも、強引にNDフィルタをかけようにも、撮像センサにに到達する光量で適正露出が決まるのだから、絞りのないiPhoneでは自ずと限度がある。

そこで、このアプリの出番。何をやってくれるのかというと、ムービーを撮影し、それをコンポジットして長時間露光したのと同様の結果を自動的に生成する。当然、露出している(レリーズしている)間じゅうずっと、カメラは動かせない。

撮ってみたら、どうやらコンポジットとはいいながら、天文写真で言うコンポジットのような画質を向上させる効果はないらしい。画像サイズは最近のムービーだけに最小のVGAからHD720、HD1080、それに8MPフルが選べる。最終的に保存されるのはJPEG。

これを試すだけのために、近隣の六甲山は高座の滝へでかけた。結果は…いいじゃん、Slow Shutter Cam。これは、他のカメラアプリの穴を埋める。スローシャッターで表現したいなら、やはりこれしかないのかも知れない。なにしろ、コンポジットでやってくれるから、状況が明るかろうが暗かろうが関係ない。一種のだまし絵なのだが、そこが良い。インストールしておいて、損はない。

作例
光跡モード撮影見本

ProCamera 8 ( ¥400)

作例 赤い月
iOS8で±が有効になり、これほど使いでの増えたカメラアプリはない。なにしろ、その±の範囲たるや、±8EVにもなるのである。お陰で、夕方、昇ってきた赤い月を撮影しても、月が飛ばなかったほど。同時に撮ってみたPentaxのコンデジでは、-2EV程度にしかできず、完全に飛んでしまった。こうなると、とりあえず撮っておきたいときのカメラとしてのコンデジの立場は、いよいよ危なくなる。

カメラ内の追加アプリとしてのvividHDRは、どうも今一つ良く分からないとはいえ、悪くはない。動いている対象にも有効ながら三通りに露出を違えたデータを合わせているというので、恐らくだが、一つの露光撮影から三つのパターンを後で抽出し、合成しているのではないだろうか。でなければ、ゴースト処理で破綻する。

ProCameraの編集機能も、かなり重宝する。その場からどうしてもアップしなくてはならない場合、どのアプリで撮ったにせよ、このアプリの編集で微調整をするのとしないのとでは雲泥の差となる。さらに、ProCameraの長所としてあるのが、TIFF保存。画像データとしては無圧縮なので、再編集しても圧縮を繰り返さず、データが劣化しない。だから、Dropboxなどに元データを送っておいて後からPhotoshopでいじる、といった使い方でも、その点は安心していられる。

作例

まとめ

三脚メーカーのManfrottoが推すというだけあって、とりあげられていたアプリのうち、試したものは三脚必須だった。ところが、iPhoneの泣き所もまた、三脚なのだ。ManfrottoはKLYP+という、三脚ネジ穴も持ったバンパーをリリースしているが、問題は、iPhoneが世代交代する都度、全部パァになるということ。おまけに、三脚穴は追加オプションの一部なのだ。ここは、スマホ用の三脚固定ホルダーで十分だから、先ずとにかく固定できるような道具を持つこと。もちろん、財布に余裕のある方には、スマートなManfrottoのキットも悪くないだろう。

私は、最初のとっつきで直感的に使いこなせ、ずっと使い続けてきてさらに身についているProCameraをイチオシする。どうしてもスローシャッター効果が欲しいときには、Slow Shutter Cam。この二つの追加カメラアプリがあれば、iPhoneで撮る写真は相当良いものになる。もちろん、それはまだ、ミラーレス一眼などのレベルに及ぶものではないけれど、撮ってメールしたりSNSにアップしたりしている分には、用は足りるし、2Lサイズ程度までの記念写真程度のプリントアウトなら、まぁそこそこにはこなしてくれる。

そして、これは真剣にカメラメーカーがしっかり押さえて、製品に生かさなくてはいけないところなのだが、露出調整、±8EVというiPhoneの機能は、それだけでコンデジをこの世から消しかねないほどパワフルな進歩だったのだ。

たしかに、iPhoneのカメラで撮影した画像は、意地悪く拡大するなどしてみればまだ、コンデジには劣る。ノイズリダクションも利かせたそれは油絵画質だし、シャープさでも及ばない。だが、それは「今はまだ、それでも」。この調子で発展するなら、いまに、スマートフォンのカメラはコンデジと完全に比肩しかねない。一方のコンデジがスマートフォンの追い上げでシェアを失っているのが、その証拠だ。ただ画面で見るだけの用なら、かなりのところまで来ていると言って良い。なんせ、「自己満足」というバイアスがある上に、あの小さな画面じゃあアラが見えない。しかし、いつどんなことに使うか分からない写真を撮るなら、今その状態で得られるベストであって欲しい。それは、後のち振り返った時、より良いデバイスや将来の発展したデバイスで、みすぼらしいものを見てしまうか、それとも、あの頃にしちゃあ上出来なのを見て楽んだり、使ったりできるか、の差となるのだから。

作例