プロトタイプとして選ばれたのはコンタックス645。これに、メガビジョンのFB4040、1600万画素デジタルバックを装着している。このデジタルバックの1600万画素の受光素子の直前に9万個のマイクロレンズを加え、夫々のレンズを通過してセルに届いた光子の量から光の入ってきた方角を測定記録しておき、撮影した後で、このデータから、合わせたいピント位置に相応するように、光量を補う。
1600万画素のデジタル画像が僅か9万画素相当に減らされてしまう代わりに、どこにでもピントを移動できるカメラになる。おまけに、SN比が5.8倍高くなり、ノイズも減る。レポートによれば、その効果を絞り値で表すと、F4で従来のF22に相当するという。
論を待つまでもなく、折角の1600万画素が9万画素になってしまったのでは、今の値段ではたまらない。だが、いつしかそうした画素数も普通以下になるなら、カメラから合焦機構をなくすことが出来る。オートフォーカスが遅いなんて文句を言っている向きには、究極の回答だろう。SN比の改善は監視カメラの夜間性能を向上させるといった効果もあるから、目的次第では今現在実用に供すべきところもあるのかも知れない。今現在手に入る最高画素数CCDはコダックの3900万画素だから、Webカム程度の映像は得られるようにできるはずだ。
Web雑誌Wiredはこのニュースで、事後にピント位置を変更してしまうという行為が、撮影時の意図への拘りから、コンピュータが介在する事後処理として否定的に捉えられるかも知れないという、カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学院の写真センター所長、ケン・ライト氏の意見を紹介している。しかし、例え銀塩であったにせよ、分野によっては多かれ少なかれ事後処理が加わっている。フォトジャーナルの「現場を伝える」意義からすれば極端な加工には懐疑的にならざるを得ないだろうが、「ちょっとピンボケ」よりは現実がより直視できるほうが良いだろう。それに、手ぶれ防止装置然りで、アマチュアが装置を得ることで完璧に近づいているとき、プロがそれを意地で拒んで劣る結果しか出せないのでは、話にならない。要は、作為が悪意にならないかどうか、ではないだろうか。
いずれにせよ、これは、様々な可能性がどのような世界を切り開いて行くのか、その広がり具合が違って見えるのだから、デジタル写真の行く末を考えるときに、頭の片隅に置いておきたい話だと思う。少なくとも、大事なスナップを撮ったのにピンボケだったと罵られるくらいなら、こんな道具を使ったほうが良いのではないかな。
Posted by nankyokuguma at 19:07:16. Filed under: Photo
