幼少の頃初めてシャッターを切ったスピードグラフィック以来、様々なカメラを手にしてきた。富士フィルムの… ハーフサイズカメラ、フジカミニに始まり、オリンパスペンFT、アサヒペンタックスSP、またオリンパスに戻ってOM-1。そして、ニコンFやF2。中判では、アオリができるからと選んだマミヤプレス、ブロニカS2の中古(幾度も、旅先に運んだだけで壊れた)。ローライフレックス2.8Fからペンタックス6×7に変更。さらになぜか充電池がすぐに壊れるローライ6006を経てマミヤRZ67に変えた。中判の遍歴には、フジの広角専用機GS645W Professoinalや、ドイ広報部から借用したプラウベル・マキナ・プロフィア・ワイド69もある。
やがて、スタジオや商品の撮影から報道・アウトドア系に仕事がシフトしたことから、マミヤに何の不満もないながら、電気制御でなくて可能な限り小さな筐体の中判ということで、ハッセルブラッド500c/m。栗本慎一郎氏から偶然頂戴したブロニカETRSiが後に加わったが、この645はS2の悪印象を払拭して余る良いカメラだった。惜しむらくはデジタル対応の道を歩まず、ブロニカD以来47年の歴史に幕がひかれたことだ。
大判は4×5で、スーパーカンボー。4×5用レンズにはフジノンやシュナイダーを持っている。思うに、シュナイダーのレンズは引き伸ばしレンズといい大判レンズといい、傑出している。ブロニカ用レンズのシャープさも、同社がシュナイダーと提携した後の傾向だろうか。露出計はミノルタを長く使っていたが、ここ十数年はGossen Profisix。他に、ミノルタフラッシュメーターやカラーメーターも手許にある。
記憶の中にあるカメラたるや、所有しなかったカメラも含めるなら、古いカメラショウカタログのほぼ全てを網羅できるかも知れない。角張ったトプコンや斜めレリーズのペトリ、6×6SLRのノリタといった銘柄も忘れられないが、キリがない。ここは、所有してきた35mmSLRに話を戻して、話は再びニコンF2から。一時はNikon F2にNikon Fを加えてずらり揃っていたのだけれど、写真はレンズだからと、コンタックスRTSに持ち替えた。実は、F2の内蔵露出計、全く役しなかった。で、RTSにしたけれど、頻繁に故障する。そこで修理している間のつなぎにとRTS2も入手したら、これが呆れるほど電池くらい。さらに、アメリカ取材をきっかけにズームレンズを物色したところ、キャノンA1とズームレンズ2本がコンタックスレンズ一本の値段で買えてしまった。これが取材の結果、あまりに良く写るもんだから、New F-1の発売を期に全部キャノンに鞍替え。
New F-1は長く使ったし、その最初の445番のボディは今も手許にある。アラスカ取材でグリースを寒冷地用に入れ替え、帰国してグリースを戻そうとサービスセンターに持参すると「そのままで良いですよ」。聞けばEOS用のグリースを入れたんだそうな。と、いうことは、EOSなら厳冬のアラスカに行くのにもグリース交換不要。これは有り難い。そこで、EOSとF-1の並列状態に。
銀塩のキャノンEOS1はリチウム単三電池さえ与えれば、動く。氷点下45℃でも、液晶表示こそ乱れたものの撮影データには狂いもない。寒冷時には巻き上げの速度も自動的に遅くなって、フィルムが割れるといったトラブルもなかった、本当に優れたボディだ。液晶表示の乱れについて、その後話したキャノンの方曰く「それでも起こってはいけないのです。改良します」。この姿勢には頭が下がる。中判だ35mmだなんて理屈を超えて、先ずはとにかくカメラは動いて、写真が写って初めてナンボ。動かなきゃただの粗大ゴミだ。
週刊朝日のグラビアを時々撮影していた頃、出版写真部の方々に「キャノンにはマウントで裏切られたから二度といやだ」とニコン優位を力説されたが、極寒地でのような良い経験の積み重ねと、フリーで雑誌の仕事をしている者にも手厚いプロサービスの恩恵に対して、その昔、学生ににべもなかったニコンとでは、自ずと思い入れも違おうというものだ。
思えば、様々なカメラを手にして選んでは変えてきたけれど、35mmSLRでは最後のキャノンが一番長い。これから先、デジタルの流れの中でカメラはどうなって行くのだろう。35mmフルサイズで中判に比肩する画像が得られるようになった今、中判カメラも、さらに大きな画面が得られるようになって共に発展するのか、はたまた35mmサイズのボディに収斂されてゆくのだろうか。
Kodakの3900万画素や、フジのハニカムなどに見られる50mmx38.8mmや52mm×37mmといった大判高性能CCDが搭載されるカメラ群(例えばPhaseOne P45)に対して、キャノンやニコンはどこまで35mmで対抗し続け得るだろう。Kodakと提携しているオリンパスの動向は? 量産効果と市場性の駆け引きが、我々が入手し、使うことのできる機材に与えられる、解像力というパワーを左右する。Phase OneやEOS1DsMk2の価格が示している通り、写真家の初期投資は銀塩時代の比ではない。3900万画素の中判機材発売が目前に迫った今、投資の回収も含めて長期的に使える機材を選定するのが、いよいよ難しくなった。唯一、4×3(資産)にはほど遠い4×5のスーパーカンボーだけは使い続けることができそうだが…。
Posted by nankyokuguma at 11:07:45. Filed under: Photo
