今、科学者たちの中からこんな話が出てきている。地球全体の気温が上がるどころか、これから小氷河期に入ろうとしているという説がある。そうすると、地球温暖化論は吹っ飛んでしまう。という一節があって、ひっかかった。おぉ〜い、違うぞ田原さん。
昨年のナショナルジオグラフィックNEWSに出ていた地球温暖化が氷河期の到来を阻止?という記事を覚えておいでの方もあるのではないだろうか。或いは、地球がサイクルとしては氷期に向かっているという話は、随分前から出ていたと思うし、見聞きしたりどこぞで読み覚えのある読者はおいでだろう。そんな説の一つから派生したのが、あの映画「デイ・アフター・トゥモロー」だった。
今のところは、
- 地球は温暖化している
- だが同時に、地球は氷期に向かっている
- 温暖化は人工的な原因で発生しており、前例はない
- 従って、どうなるか皆目見当がつかない
田原氏曰く
つまり、2050年なら何も今、やらなくていいと、数字を並べるだけでいい。ところが2020年なら、今からやらなくてはならない。そこで、数字を並べるだけにして、2050年80%削減とした。
この政治的読みが間違ってるかどうかなど、私には知る由も確かめる術もない。まぁ、さもありなんくらいに思うだけだ。だが、どうせ氷期に入って冷やされるのだから、悪影響もなくなるだろうなんてぇのは、とんでもない了見違いだろうと想像がつく。自然がそれほど単純であろうはずがない。願わくば、2050年に80%削減が成し遂げられ、或いはもっと早くに100%削減されていて欲しい。例えば、森林の自然移動の速度は0.5マイル/年だが、平均気温が一度上昇したとき、気候帯は35〜50マイル北上する(自然の終焉―環境破壊の現在と近未来
氏はまた、日経の記事と称して
1998年をピークにこの10年間は横ばいないし低下を引いているが、この記事自体、学者内部の内紛を喜んで記事にしたと評する向きもあった。それに、ちゃんと Wikipedia や 気象庁の資料 を調べ、グラフを見れば一目瞭然、横ばいないし低下ではないと分かる。どこをどう見れば「この10年間は横ばいないし低下」なんて言えるのかね。
少なくとも、「地球が冷えつつあるから暖めても大丈夫だよ」などという科学者はいないだろう。それは、液体窒素を加熱し続ける溶鉱炉にぶっかけて、さてどぉなるかと高見の見物を決め込むようなもの。だから、強引に駆け引きに結びつけて政治的な色合いを濃く見せたこの記事の論は、強引に過ぎる。
先頃も別件で「そりゃあ違うぞ田原さん」と思った記事があったが…異常気象に起因する災害の被害想定、その経済的ダメージの膨大さなど考えると、田原さんともあろう方が、COP15を睨んだ動向とその政治的背景を説いているのは分かっているが、これではあまりに無責任な話しようじゃあござんせんか。
'09年8月10追補 ────────────
問題の日本経済新聞は2月2日付科学面掲載「地球の気候当面『寒冷化』」らしい。
この記事に掲げられたデータの原典は、IPCCの
http://www.ipcc.ch/pdf/assessment-report/ar4/wg1/ar4-wg1-spm.pdf
の14ページ。
日本語訳全資料は
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/index.html
該当資料は
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/ipcc_ar4_wg1_spm_Jpn.pdf
で、同じく14ページにある。
また、日経記事掲載の表は英気象庁による平均気温を掲載しているが、その英気象庁サイトを見ると、平均気温が下がっているというのは、「根拠のない俗説」の一つとして
http://www.metoffice.gov.uk/climatechange/guide/bigpicture/myth2.html
にあるだけだ。全体の概念は
http://www.metoffice.gov.uk/climatechange/guide/downloads/quick_guide.pdf
に記されており、17ページに
温暖化は自然の変動幅により、必ずしも前年より翌年の気温が高いことを意味せず、長期的な傾向として上昇している意味である。と明記されている。
「根拠のない俗説」をモトに国際的な環境政策を議論されては、たまったものではないし、そんなことを真に受けている実務担当者がいるとも思えない。
ちなみに、学者のケンケンガクガクはエネルギー・資源学会WebサイトにPDF形式で保存されている。詳細は同サイトホームページ右側の新春Email討論の各リンク先PDF。さて、皆さんはどう読まれるだろうか。
Posted by nankyokuguma at 17:45:23. Filed under: Nature
