カメラの最新情報といえばドイツのPhotokina。毎回、多くの新製品がここでお披露目される。が、今回は事前に多くの情報がメーカー広報から出されていて、どうもその場でベールを脱ぐ目玉がない。Canon EOS 5D2も然り、SONYα900も然り。そんな中、様々に日々報じられる新製品群で唯一…
目を剥くような代物がLeica S2システム。35mmフルフォーマットよりも60%(Leicaサイトによる)大きな30x45mmというフォーマットサイズの撮像素子は37.5メガピクセル。防水でAFのシャッター組み込みレンズも専用でフルラインアップ予定だという。35mmボディの手軽さに中判カメラの実力を凝縮したカメラは、Webサイトの写真で見てもLeicaならではの重厚な風貌。中判フォーマットでのリリースの根源は、どうやらPhaseOneとの連携によるようだ。
超高級
発売時期も価格も未定(2009年春か?)だそうだが、PhaseOneの価格からすればボディのみ数百万(噂によれば2万ユーロ=300万円越、或いは15,000ユーロ=230万円越)。レンズも揃えれば大変な額。このカメラシステムは新規格だから、レンズなどの周辺資産は全て新規調達になる。初期投資が叶うならそれなりに注目すべきところだけれど、PhaseOneやLeafには同等、或いはそれ以上の解像度を提供するデジタルバックがある以上、難しいように感じる。
中・大判ではハッセル-フジ、Mamiya、ジナーといったデジタルカメラが軒を並べる。これらは同じ写真という世界でも、違う土俵 ─ スタジオワークなどに重きを置く。ひとたびフィールドでの利用に目を向けると、35mm型のような機動力の世界と、もっと巨大なメガピクセルの世界(風景)がある。S2は35mm的な使い方のジャンルで、しかし中判の解像度で色再現性も高めたいと今考えるならば、妥当な選択な一つにはなるだろう。だが、それならばなぜAFなのだろう。今時自動的に合焦しないなんてカメラじゃない、ということなのだろうか。
脱35mmは誰のため?
大きなフォーマットで撮影することの意義の一つに、画面に含まれる情報量の違いがある。銀塩にしろデジタルにしろ、写っている画面を構成する一つひとつの要素を成すドット数が桁違いなので、拡大しても拡大してもまだディティールが破綻しない、という状態が得られるわけだ。しかし、スキャナーのそれは瞬間ではなく瞬間のツギハギなので、理想としてはワンショットの撮像素子のほうが良い。一方で、その結果を公開するにあたっての媒体は何か、という前提もある。ビルの壁面を埋めるような巨大公告で瞬間画像が欲しいなどというケースは別として、おおよそ既存の印刷物の世界は既存のデジタル機材で事足りるようにはなってきている。印刷線数が少ない新聞なんぞは今のEOS1DやNikonD3で足りているらしく、AFや速写機能のほうが重視されている。雑誌でも相当高級な印刷をするものでない限り、先ず不足はないだろう。とすると、一体このLeicaが想定する市場のユーザーは誰なのだろうか。プロフェッショナルにとLeicaのサイトにはあるのだけれど、ハッセルなどの経験からすると、高い修理代やそれほどでもない耐久性はプロには受け容れがたい。むしろ、何か違う、スノビズムの世界を連想させるのだ。
もちろん、人生実用性一点張りでは面白くもおかしくもない。カメラという道具は趣味性の高いものでもあるのだから、Leicaを使う御仁があればあったで、それは素敵なことだ。だが、趣味性の中にはある程度の恒久性をもった資産的な価値が含まれる。果たしてS2のシステムはそうした素敵な道具なんだろうか。多くの中古ライカレンズが取引されるような価値観を、S2は将来保っていられるのだろうか。それとも、時代の狭間で咲いたあだ花のように忘れられるのだろうか。消え去ったとしても、値段も質もその時点として見るならやはりLeicaならではの代物だった、とは評されるのだろうが…。唯一、もしマウントアダプタが作られるようなら、より大きなフォーマット用のレンズの中央の美味しいところだけを使うということで、35mmサイズのDSLRユーザーにとって、とっても贅沢な中古レンズの選択肢となるかも知れない。なんせ、フィルムの中・大判用とは違い、解像力で手を抜けないのがデジタルレンズなのだから。
マイクロフォーサーズ
もう一つ、PanasonicがリリースしたマイクロフォーサーズカメラDMC-G1が注目されているようだが、私はこの機材はちょっとどうなんだろうとひっかかっている。というのは、もともとミラーがないものを「なんちゃってデジイチ」とバカにしていたマーケットがこれをすんなり受け容れるとは思えないのだ。女性向けに、という断りも、どこか小馬鹿にしている響きがある。Canonのデジイチで頑張っている女性写真愛好家に尋ねて見ると良い。恐らく、そんなカメラには見向きもしないことだろう。コンパクトデジカメで満たされないところを求めている人たちが、マイクロフォーサーズで納得するわけが、ない。
一方で、拘りを捨ててしまうと逆に、ではどうして一眼レフで光学的にファインダーが成立していないといけないのか、という疑問が出てくる。ライブビューモニタを使うならばパララックスは存在しないのだから、バッテリーをセーブする以外の意味ではファインダーの存在意義すら一も般的には薄い。増して、ホールディングがきちんと成立しない筐体サイズのカメラなら、なおさらだ。顔にしっかり押し当てて、ブレを防ぎながらファインダーを覗くのでなければ、必ずしもオプティカルなファインダーでなくとも構わないではないか。被写体への追従が遅れるという論が今までは勝っていたようだが、パスト連写のように後で瞬間を選べるのなら、そうした理由は成立しなくなる。撮影アングルの自由度を高める自在に動くモニタのほうが、オプティカルなファインダーより、どれほど役にたつだろうか。Zigviewのようなアクセサリだって、そんなところから生まれてきている。
さて、そうは言っても、それは理屈として頭が納得すること。ライツミノルタCLとか、ペンタックスの110一眼レフなど、狭間狭間であだ花のように出ては消えていったカメラがあったが、私はそれらを思い起こした。目の付け所が良いように見えて、実際に買うかとなると大きな疑問符がついてしまう ─ そんな存在なのだ。「それってなんちゃってデジイチだろ」という、そこを越えるプラスアルファはあるだろうか。前述のLeicaのような暖簾があるわけでなし、所有することで満たされるわけでもない。こうしたところが、これからのカメラにとって、実はとても大きなハードルなのかも知れない。
ちょっと古いけれど、カメラアーマー
ところで、ちょっと情報としては古いけれど、カメラアーマーというアクセサリをご存じだろうか。iPodやiPhoneでは柔らかい材質のケースがあるけれど、それのDSLR版だと思ったら良い。日本ではハクバ写真用品が取り扱っているようだ。Photokinaの情報を探っていて偶然見つけたPMAの動画情報で見つけて、さっそく調べてみたのだけれど、これが結構良さげに見える。残念なのはまだ選べる機種が少ないことと、日本で販売されているのが黒ばっかしだということ。私が目を付けたのはカモフラージュ柄で、恐らくバードウォッチングのフィールドなどで重宝されると踏んだ。黒でも良いけれど、今ひとつ寂しい。Kissなんかだといろんな色があって良いだろう。
カメラを複数台、長さを違えたストラップで首から下げていると、どうしても走ったりしていればボディ同士がぶつかるときがある。このアーマーは、そんなときについてしまう傷を防いでくれるし、若干は防塵の役もするだろう。そのうち手に入れてみたいと思っている。
で、フォトキナ
この新製品の祭り、冒頭でも述べたように、今年は主な新製品があれこれ事前に報じられ過ぎて、開会したその時にはもう終わっているような気分にさせられたが、まだ各Webサイトに出てきていない、前述のカメラアーマーのようなアクセサリ群が気になっている。かつてのマンフロットの登場が三脚やスタンドを軽量化してくれて有り難かったように、ちょっとしたことだけれども大きな前進につながる道具が、案外ありそうに思えるのだ。そりゃあ行って見ることができれば一番だけれど、こちとら撮る人であって道具を仕入れて売る人じゃあない。ざっとWebサーフィンしていて目に付いたのはレンズベイビーの新製品。JOBOのphotoGPS。そして、9.11以後厳しくなった機内持ち込みへの対策AirTravel Camera Bag等など。良さげなものを見つけたら、またここでも紹介したいと思う。Posted by nankyokuguma at 14:51:15. Filed under: Photo
