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Monday, February 25, 2013

撮ってなんぼ、写してなんぼのレンズを机上で論じるのは不本意ではあるが、それでも、大枚はたきつつ一喜一憂を続けるなんて、とてもやってられない。しかし、インターネットとは有り難いもので、レンズ性能を比較した、DxOMarkというwebサイトがある。ここでテストされた上位レンズを、大雑把に上のほうだけピックアップすると…

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  • Nikon AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G
  • Carl Zeiss Makro-Planar T 100mm f/2 ZF2
  • Sigma 85mm F1.4 EX DG HSM Canon
  • Samyang 85mm f/1.4 Aspherique IF
  • Carl Zeiss Makro-Planar T 100mm f/2 ZF2
  • Sigma 35mm F1.4 DG HSM A
  • Carl Zeiss Distagon T 35mm f/1.4 ZF2
  • Canon EF 100mm f/2 USM
  • Canon EF 35mm f/2 IS USM
  • Nikon AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G
  • Nikon AF-S Nikkor 85mm f/1.4G
  • Nikon AF-S Nikkor 24mm f/1.4G ED
  • Carl Zeiss Distagon T 35mm f/2 ZF2
  • Canon EF 300mm f/2.8L IS II USM
  • Canon EF 28mm f/2.8 IS USM

…という具合で、Lレンズでもない上にISつきで食い込んできた35mm f2や、SIGMAの新レンズ、SAMYANGの高得点を見ると、どぉもMTFテストの成績を上げるチューニングというのがありそうだ。それは、SIGMAの新シリーズに言うMTF測定器の話にも通じている。

必ずしも、高い・明るい=高性能ではない

FDの昔から、Lだからといって必ずしも明るいレンズのほうが画質性能で上回るわけではなく、ただ明るいだけ、高いだけ、というのも、まぁないわけじゃなかった。FD85mmF1.2Lなんて、ポートレートで開放で使うと、頬にピントが来ていても鼻や目はボケる。それほど、被写界深度が浅い。Contaxで使ったZeissの85mmF1.4では、それほど違和感なく使えていたから、かなり呆れたのを覚えている。結局、FDの85mmではF1.8のほうが個人的には好ましく思えたものだった。

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これがズームレンズとなると、DxO MarkのMTF性能比較ではどうあがいても大半が20ポイント以下で、どんぐりの背比べになる。腐ってもLで、70-200mmや24-70mm、Tamronの70-200mm(!!? TAMRON? Yes...しかも、実勢でCanon Lの半額。但し、好成績なのは70-200だけ)は、単焦点に比肩する性能を示していて、これはNikkorも及ばない例外なのだが、それにしても全体で見れば、成績は悪い。

また、「敢えて、手ぶれ補正なしで高画質を」というレンズは、実際のフィールドで「写してなんぼ、写ってなんぼ」の尺度からしたら、机上で上がった性能分だけマイナスにしたいくらい、手ぶれ防止機能の効果は、大きい。それほど、人間の体ってのはどうあっても、ブレる。

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裏面照射型CMOSの実現で、マイクロフォーサーズが提唱したテレセントリック光学系も、必須とはされなくなり、フランジバックの短いミラーレスがうけたために、古い単焦点レンズの性能が見直されもした。これは、メーカーにとってはレンズでユーザーを囲い込むビジネスモデルが通じなくなる危険をはらんでいるのだが、一方で、本当に優れたレンズを作り得るのであれば、その昔「レンズで選べばCanon」と言われたように、そのレンズが本体を選ばせ、ブランドの地位を確立できるということでもある。

レンズの優劣とは

いずれにしても、どうやらカメラレンズは一つの転換期を迎えたように思う。それは、多くのAPS-Cのような一回り小さなセンサを考慮した広角化であり、そのための、光学面で性能結果が出せるような、技術的困難の克服だ。そんな傾向を如実に示しているレンズの一本が、新しいCanon EF 35mm f/2 IS USMだろう。他にも、SIGMAの新らしい基軸があり、海外では、MFだが、韓国SAMYANG製高性能(!!)お買い得(!!!)レンズがある。

冷酷なようにも見える、レンズテストサイトの評価ポイント。その結果次第では、メーカーが長い間培ってきたブランドといえども、いとも簡単に崩れ去って行く。これからのカメラの選び方として、「優れたボディと優れたレンズの寄せ集め」も、十分ありなのかも知れない。なんせ、絞り環やピント環の方向が逆だなんて特徴は、AFと自動露出で使うなら、全く意味を持たないのだ。

M42のオールドレンズにつかれて以後、補正でレンズ特性を補うような安レンズと、そうでない素の写りの良さとの差が、とても気に成っている。ここに掲載したのは、オークションで5000円で入手した、SIGMAの70-300mm f4-5.6 DG(写真左下)をPentax K-5IIsに装着して、手持ちで撮ったもの。RAWで撮って、Silkypixで現像した。さて、DxO Markが示す数値の差は、本当にそれほどの結果の違いとして、如実に出るのだろうか。あとは、皆さん各自、先ずは手持ちのレンズで自分で撮った結果と数値を比べ、買い換えや買い増しの参考にされるようお勧めしたい。

SIGMA ZOOM

DxO Optix Proのようなアプリで事後補正することによって、あるいは本体に内蔵する補正機能によってでも、レンズの欠点を補ってしまうなら、メーカーはかなりのコストダウンができるだろうし、ユーザーにおいても、さほどの高性能は必要ないという、一つのデジタル時代なりの割り切りも、ありかも知れない。むろん、私はそれは違うだろう、と思うし、実際、違いの出る時は、どうしたってある。

私たちが固定概念として持っている、プロはメーカー純正レンズを使うもんだとか、或いは、サードパーティブランド製レンズは劣っているといった思いが払拭されるのには、まだもう少し時間がかかるのかも知れない。一つには、サードパーティ製レンズは玉石混合で、たまに良いのが出ているからといって、全てが良いわけではないのに対して、メーカー純正は、そこそこは品質も揃っているだろうし、そうは言ってもメカニズムとしてボディとトータルで優れた性能を発揮できるように作られている「だろう」という、真偽はともかくとして、頷きやすい理屈も、ある。

道具のことを忘れて、被写体とその写し方、写真表現そのものに熱中したいから、機材のことは忘れられるような、そんな機材が欲しいと思う。まぁ、なんだかんだ言って、最後は、写った結果の、写真が表すところ。レンズの違いの分かる人にだけ通じること、なんかじゃないんだよなぁ…。