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Tuesday, August 23, 2011

もう一工夫の、灯りのマジック ライトスクープ

カメラメーカーは、平気で撮影レンズ光軸と内蔵ストロボの軸をずらす。実は、素人写真をヘタクソであり続けるように突き落とす設計なのだが、そうは思ってないんだろうなぁ…。デジカメのスイベル型は辛うじて光軸と一致していたが、その全体の形そのものが消えてしまった。一方、アメリカでユニークな道具が発売されていた。ライトスクープというそれは…

写真 Photo Scoop

訳してみるなら「光のひしゃく」で、特ダネのスクープじゃあ、ない。光をすくいあげて、天井に向かって放り投げるような、そんなイメージ。なぁんとなくシェイプもそぉ言われると、お菓子やアイスなどをすくう、あのスクープっぽく思えなくもない。

もともとは、フラッシュ内蔵のデジイチへの装着を想定したデバイスで、ホットシューにさし込むだけで天井バウンスライティングで撮れるというもの。作ったのは、サンフランシスコ州立大学でフォトジャーナリズムを教えるケン・コブレ博士。「汚いライティングの写真なんぞ、もう見たくもない」と思って考案したんだそうな。だが、それを見るなり私の頭に浮かんだのは、リコーGX200だった。

写真の要素のうち、ライティングはとても大きなポイントだ。諸外国の町のカメラ店では、ライティング機材も豊富に販売されている。だが、高価なライティング機材を揃え、いちいちセッティングして撮るというのでは、スナップ的な、今ここでこれを撮りたいという瞬間には無理というもの。だから、ワンタッチですぐに、ベストではなくてもベターなライティングができれば、それに越したことはない。

それを実現するのがライトスクープで、そのライトスクープが装着できる条件がホットシューとそこに備わるフラッシュ。つまり、どうみてもGX200にも使えそう。折からの円高で価格も気安く、早速オーダーした。8月8日に発注で、10日に発送を知らせるメールが届き、現物は16日と、First Class mailでも、とても早かった。

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到着したアイテムを、先ずDSLRに装着。言うまでもなく、完璧。設計上、天井バウンスさせるには、今一つ内蔵ストロボではパワーが足りないが、そこは感度設定を上げて補う、手軽さ優先の割り切りよう。デジイチのフラッシュは、脚になる部分が長いからこのままで良いのだけれど、GX200に装着すると高さが足りず、下の作例左のように、隙間から灯りが漏れてしまう。それを防ぐには、厚紙かなんかで底に蓋をすれば良い。名刺一枚あれば、ちょうどうまい具合に挟まってくれる。あとは、能書き通り、効果して、下右のような結果が得られる。

天井がうまくバウンスに使えない環境や、カメラが下を向きがちな料理の撮影でも、スタジオフラッシュのパラソルやPhotoflexのLiteDisc、或いは、それらに相当する何か を使って光をうまく反射させれば、超お手軽に、綺麗に写るライティングが実現できる。パラソルは、普通に傘を差している気分だし、さらに、工夫次第で被写体によって、とても有効な使い方がある。

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▲ LightScoopの底に蓋をしないと、左のように下から光が漏れる。蓋をすれば、右のように綺麗なバウンスライティングの結果が得られる。

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写真を綺麗に撮るためには、カメラやレンズもさることながら、最も肝心なのは「光」。それで陰影ができ、良い写真にも悪い写真にもなる。大昔はphotographyを「光画」と訳してもいたのだ。そして、その光を最も有効に使える設計配置になっている、GX200。今や、他にこのような設計配置になっているコンデジは皆無だから、とても貴重な一台。GXRの内蔵ストロボとシューの関係がこのようになっていないのが、心底惜しまれる。まるで、光学ファインダー用にシューを備えて、内蔵フラッシュはおまけ。GXRを選ぶユーザーならライティングは外部ストロボをつけるだろうという読みなのだろうけれど…。

実は、デジタルになって一つ、大きく変わったことがある。それは、「感度」。フィルムはフォトンが幾つも当たらないと感光しないが、デジタルでは僅かなフォトンでも感光する。だから、例えば星を追尾して撮影する場合、フィルムなら手で赤道儀を回して追っていても大丈夫だったのが、CCD撮影では電子制御でなければ難しくなった…というのは分かりにくいかな。とにかく、実はデジタルのほうが、僅かな光でも十分反応する。だから、小さなストロボでもかなり有効な照明効果が得られる ── いや、それどころか、逆に大きすぎるストロボでは求められる絞りが大きくなりすぎて、回折ボケのためにピントが甘くなってしまうことすらある。

一方で、小さなCCDのカメラでは自ずと、同じ範囲を同じ距離から撮影するにあたっての焦点距離が短くなり、従って被写界深度が深い。パンフォーカスになりやすいのだから、絞る必要がない。

この二つの要素を掛け合わせると、内蔵の小さなストロボを上手に取り扱えば、相当綺麗な写真となるのが分かるだろう。世の中、大きな受光素子のカメラを選んで、ボケを使って表現するのが流行っているが、それは、それ。カメラメーカーにはこのあたりの道理を、良ぉぉく考えて欲しいものだ。おまけとは違う、カメラとしての内蔵ストロボの存在意義を追求すれば、差別化の鍵は自ずと明らかなのだから。

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▲GX200+Light Scoopでの作例 鱧刺盛り合わせ