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Monday, June 08, 2015

世のデジカメたるや、ことごとく「大サイズセンサ搭載」を我もわれもと競っている。1in.搭載だ、APS-Cだと、小さいけどセンサはデカイよ、というのが今時の最先端。それで写る画像の特徴は、浅い被写界深度である。しかし…

写真を長らくやっている者としては、どうにもそこがひっかかる。

F16・22 32…F64 ─ こうした絞り込まれた状態の数値は結果をパンフォーカスに導き、或いはフィルムならば超シャープネスを得る、プロの選択だった。ファッション写真でも、そうした絞りを得てこそのディティール再現性こそが「凄さ」であり、そのために1万w/s以上ものスタジオストロボ光を使ったのだ。

今は、デジタルでは回折現象のためにボケるから、それほど絞れない。自ずと、1万w/sなんて光量は、要らなくなる。だが、パンフォーカスが要らないという話ではなかろう。シャープなパンフォーカスは、逆に、モノに語らせ、モノを見せるには基本的に必須のはずだ。

そんな、パンフォーカスをデジタルで得るのに、最も簡単なのはコンデジを使うこと「だった」…こんな時流にどのカメラもが流されるまでは。どんな道具であれ、使いこなせばそれなりとはいえ、ある程度良い結果は出せる。そこは、腕だ。そして、それに応えるカメラも、実際、かつては存在した。

パンフォーカスができないくせに、何がボケ味だ

写真

小さなセンサでも豊かな色や幅広いラチチュードを、という努力を重ねたのなら、分かる。しかし、それならセンサを大きくしましょう…光が一杯捉えられるから、再現性や寛容度に優れ、ボケも綺麗ですよ、ときた。結果は、そう、パンフォーカスが得られづらくなっただけだ。だって、絞れないのだからね。こればっかりは、トリミングなんかでは解決しようがない。

コンデジのパンフォーカスで最たるものは、スマホのカメラだ。なにしろあの小ささだから、被写界深度は深い。それが不得意なところをやればデジカメの優位性が保てるだろうなどというのは、しかしながらボケ味がそれだというのでは、お門違いも甚だしい。ボケもパンフォーカスもやれてこそのデジカメであるべきなのに、そうでないのだから、文字通りの片手落ちである。

それでも試しにと絞ってみれば…回折でボケる上に、必要な光量も増える。自動的に仕掛けは大きくなり、だけど結果が伴わない。万事休すで、7年前の某デジタルカメラを引っ張り出して撮ると、やっぱり、これが一つの答えなんだと納得する(作例右上)。欠点といえば、その当時の最先端らしく、暗いところでの高感度画像が使い物にならないことくらいだ。

失われた選択肢

デジタルカメラの撮像素子の素性は、SONYとCanon、それに、SIGMAのFoveonを加えても三種類。SONYは当然、他社に最先端の良い素子は出さないだろうから、多くのメーカーはSONYの一歩後を行かざるを得ない。唯一向こうを張っているのがCanonだと思うが、スイングパノラマのような面白い仕掛けは備わらない。デジイチならそんなもんは要らないにしても、広く一般の市場を考えれば、スマホでもできるスイングパノラマくらいは、コンデジなら標準搭載して欲しいものだけれど、それを言ったらSONYかLumixしか選べない。

水中撮影できるとうたっているカメラを、それを真に受けて水につけたら浸水、というのも困る。本格的にダイビングをやる方々はとっくにご承知で、ハウジングは必須。防水機能は万一の保険程度にお考えのようで、それはそれでとても正しいのだけど、ガスケットは劣化するものなのだから、ユーザー自身がグリスを補給したり交換したりできるのが本来のありようだろうと思う。恐らく、相当量の水中撮影対応カメラが、水没でゴミとなっているだろうと、想像に難くない。なにしろ、髪の毛一本挟まったらアウト、なのだ。

まぁしかし、それらは撮影本来からすれば、余興の部類。それよりも深刻なのが、本筋のとにかく写すその「核」だ。コンデジは自ら欠点を拡大し、スマホに市場を明け渡そうとしているかのようにすら感じられる面がある。それは、バウンスライティング。フラッシュを何らかの方法でバウンスさせて、影を綺麗にしたり、ディティールを豊かに再現したりするのは常套手段だが、今時のコンデジは自らその余地を捨てている。

コンデジの服毒自殺

このままでは、尻すぼみのコンデジはますます駄目になり、市場は縮小の一路を辿る。

バウンスライティングを実現できるLightscoopという便利なアクセサリが、新しいコンデジではどんどん装着しづらくなっているのが、その一例だ。Lightscoop Jr.というコンデジ用の製品があるのだが、例えばSONYのHX90Vでは、そのマウント部分を接着する余地がない。わざとのように、装着できない位置・寸法配分にして、バウンスさせられないよう、まるで「毒でも盛るかのように」仕掛けている。これでは、コンデジの服毒自殺である。

「パンフォーカスできません」「バウンスライティング駄目です」「小さくてホールドしにくく、滑ります」さらには、「壊れます」…良いことないなぁ。実は、「壊れます」というのは、Webサイトの仕事上、他の方々が撮られた画像データを処理することが少なくないのだが、その際、カメラの故障に気付く機会が増えてきたのだ。画像の片側だけがボケていたり、全体にボケてどこにもピントがなかったり…とにかく、どう見ても健康なカメラで撮られたモンじゃないでしょ、という画像が届く。指摘して修理に出したほうが良いとお勧めするのだが、不思議なことに、まるでコンデジを、使い捨ての「写ルンです」だと思っているかのように、修理する方のほうが少ない。認識が「写ルンです」では、もうスマホで良いと思うのも、ムリはない。

ボケ味などという大きな撮像素子の、困難なパンフォーカスとバーターになった被写界深度の浅さなんぞはデジイチに任せて、せめて、ポップアップした内蔵ストロボをひょいと回して、バウンスライティング自由自在なコンデジくらい、そろそろ出て来るべきなのだ。光画を綺麗に、というたった一つの目標さえあるなら、その方向は自ずと見えるはずだと思うのだけど…。